大判例

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最高裁判所第二小法廷 事件番号不詳 決定

本籍並びに住居

高岡市小馬出町二九番地

荒物商

井本和平

明治二三年一一月二五日生

右の者に対する所得税法違反等被告事件について、昭和二四年一二月一日名古屋高等裁判所金沢支部の言渡した判決に対し、被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人小室薰の上告趣意について上告の申立は刑訴四〇五条に定めてある事由があることを理由とするときに限りなすことができるものである。同四一一条は上告申立の理由を定めたものでなく、同四〇五条各号に規定する理由がない場合であつても上告裁判所が原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めた場合に職権をもつて原判決を破棄し得る事由を定めたものである。

しかるに所論は明らかに同四〇五条に定める事由に該当しないしまた同四一一条を適用すべきものと認められないから、同四一四条、三八六条一項三号により主文のとおり決定する。

この決定は、裁判官全員の一致した意見である。

上告趣意書

所得税法違反 被告人 井本和平

右頭書被告事件につき上告趣意書別紙の通り提出仕候也

昭和二十五年三月一日

右弁護人 小室薰

最高裁判所

第二小法廷 御中

第一点

第一審判決は判示第二の(二)の1、において指定生産資材たるマニラ麻ロープ(綱)七十八貫を販売の目的を以て需要者割当証明書又は販売業者割当証明書の記才するところに従はず且之と引換ふることなく十万三千九百三十円に買受けて之を讓り受け判示第二の(二)の2、において指定生産資材割当規則別表所定の指定生産資材たる別紙二表(無切符販売一覽表)記才の畳縫糸等を需要者割当証明書又は販売業者割当証明書の記才するところに従はず且之と引換ふることなく合計金八万五千三百十円にて販売して之を讓り渡したる事実を認定し被告人を処罰したり。

然れども指定生産資材割当規則第十四条には特別の定めを為し居るを当て第一審が当該物件讓り受け及讓渡しの対価を判文上明示せざるか又は統制額以下の対価を記才せる場合は格別然らざる限り該取引は臨時物資需給調整法を以て処罰すべきや又は物価統制令違反罪に問擬すべきやを決するを得ず。

然るに第一審がこの点を看過し漫然公訴を容れ臨時物資需給調整法違反として被告人を処罰したるは審理不尽、処罰すべき事実の未確定、法令の誤解、その不適用等の違法ありと謂はざる可らず。然るところ第二審又この点を看過したるは刑事訴訟法第三百九十二条第二項所定の職権調査を怠りたる失当あるのみならず若し右判示に示す讓受け及讓渡価格が統制額を超えたるものなるときは物価統制令違反罪のみを構成すべきこと前説明の如くなるが第二審判決後判示物件に対する統制額は悉く廃止せられ最早処罰するを得ざるに至りたる事情なるを以て刑事訴訟法第四百十一条第五号の場合に該当す。

要之第一審判決は

(1) 判決に影響すべき法令の違反

(2) 判決に影響を及ぼすべき重大なる事実の誤認ある外

(3) 右判決後に刑の廃止ありたる場合に該当するものなるところ等の事由あり第二審が右(1)、(2)の点を看過したると新に(3)の事由の存することを疑うに足るべき事案にして原第二審の判決を破棄せざれば著しく正義に反するものと認むべき案件なりと思料す。

第二点

(Ⅰ) 第一審判決判示第一の所得税法違反

(Ⅱ) 判示第二の(一)の隱匿物資等緊急措置令違反

(Ⅲ) 判示第二の(二)の1の臨時物資需給調整法違反(指定生産資材割当規則)並判示第(二)の(2)の内のマニラ麻ロープに付けての同違反の点に付てはその無罪たるべきこと昭和二十四年十月六日附当弁護人提出の控訴趣意書第三点の(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)に依り明白なるに不拘原審が之を排斥し控訴を棄却したるは失当にして結局原判決は判決に影響を及ぼずべき重大なる事実の誤認ありて之を破棄せざれば著しく正義に反するものと信ず。

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